電子デバイス

半導体メモリ:−MOS型電界効果トランジスタの応用−


<目次>

1.はじめに
2.DRAM
3.DRAM素子
4.SRAM
5.不揮発性半導体メモリ
6.トンネル効果
7.電子なだれ破壊
8.EPROM
9.EEPROM−記憶した情報の消去法(その1)−
10.EEPROM−記憶した情報の消去法(その2)−
11.フラッシュEEPROM
12.多値フラッシュEEPROM
13.強誘電体メモリ(強誘電体とは)
14.トランジスタを使った強誘電体メモリ
15.半導体磁気メモリ
16.相変化メモリ
17.抵抗変化型メモリ
18.結びにかえて−メモリの特許分類−



1.はじめに

 機械がする記憶にはアナログ方式とデジタル方式があります。例えばカセットテープなどのオーディオテープはアナログ方式です。音は電圧の振動の周期と強弱(すなわち波形)で表すことができますが、この波形に従った磁場をテープに塗った磁性材料にかけて磁化するとこれは磁場を取り除いてもそのまま保たれます。このような記憶はアナログ方式と呼ばれます。

 これに対してCDなどの光ディスクはデジタル方式です。音の波形を短い時間間隔で切り分け、そのそれぞれの値を数字(2進数)に直し、その数字(1か0)に従ってディスク上に細かい穴を開けます。穴はそのまま保存され、穴の有無で音が記憶されます。ディスク上には1か0の情報しか記憶されていないので、これをデジタル方式と呼びます。

 これから説明する半導体メモリは要はトランジスタのスイッチです。そのオンオフで1か0の情報を記憶します。ですから半導体メモリは基本的にデジタル方式の記憶になります。最低1個のトランジスタを使って1か0かの情報を記憶しますが、これが1ビットで、1つのチップで何ビット記憶できるかがメモリーの重要な性能になります。この性能を記憶容量と言います。1ビットを記憶するのに最低1個のトランジスタ(ここではMOSFET)が必要ですから、記憶容量が大きいほど、多数のMOSFETを1つのチップに集積しなければならず、1個のMOSFETを小さくすることが要求されるわけです。

 さてこの半導体メモリにはいろいろな種類があります。まず第1に

  揮発性か不揮発性か

という違いがあります。揮発という言葉はアルコールやガソリンを放置しておくと蒸発してしまうことを意味していますが、メモリの世界では電源を切ると記憶が消えてしまうことを言います。ただこれはほとんど半導体メモリに特有の話です。フロッピディスクなどの磁気メモリやCDなどの光メモリーは装置から取り出して持ち歩いても消えることはありませんから不揮発性メモリです。

 ところが半導体メモリはトランジスタのオン、オフで記憶をしますから、電源がないとだめです。つまりソース−ドレイン間に電流が流せるように電源をつなぎ、ゲートに電圧をかけてはじめてオンかオフかが決まるので、電源を取り外してしまえば、オンもオフも無くなってしまいます。つぎに電源をつないだときには前にどうであったかには関係なく動作しますので、記憶は残っていないのです。このように電源をつないでいる間だけ記憶機能があるものを揮発性のメモリと言います。

 普通のMOSFETを使ったメモリは揮発性ですが、特殊な工夫をしたトランジスタを使うと半導体メモリでも不揮発性のものができます。さらに不揮発性の半導体メモリーは大きく2つに分けられます。記憶している情報を

  書き換えられるか書き換えられないか

です。

 記憶されている情報を書き換えることもできないメモリをROMと言います。Read Only Memoryの略で、記憶されている情報が1か0かを判別する(「読み出す」と言います)ことはいつでもできますが、今まで記憶されていた情報を変える(0を1に変える、または1を0に変える)とか消す(全部0か1にする)こと(「書き込む」と言います)はできないタイプのメモリーです。半導体メモリではありませんが、CD−ROMを連想していただければよいです。CD−ROMはそこに記憶されている情報を読み出すことはできますが、変更する(書き込む)ことはできません。

 半導体のROMには、それが工場で作られたときに書き込まれた情報をまったく変えることができないものと、コンピュータなどに使用している状態では書き換えられないけれども別の専用の装置を使えば書き換えられるものとがあります。

 電源を切っても消えないが、情報は書き換えられるという半導体メモリーは最近急速に普及しました。先頃、発明の対価についての訴訟でも話題になったフラッシュ・メモリというのがそれです。デジカメに付いている小さなカード状のものとか、パソコンで作ったデータを持ち運ぶスティックのようなものをよく目にします。後ほど、詳しく説明しますが、電源を切っても記憶が消えないようにする巧妙な工夫がされています。以前はこれが高価であったので、揮発性メモリーで我慢してきましたが、これが安くなれば多分揮発性メモリは不要になるのではないでしょうか。さらにすでにフロッピディスクが置き換えられているように、磁気メモリや光メモリも不要になってしまうかも知れません。

 このように半導体メモリーは揮発性と不揮発性という分け方、書き換え可能、不可能という分け方があるのがわかります。さらに

  メモリへどのようにアクセスするか

でも分けることができます。RAMという略語を聞かれたことがあるかもしれません。これはRandom Access Memoryの略です。メモリーは複数並べて使用しますが、このRAMは端から何番目であろうと自由に情報を書き込んだり、読み出したりすることができるメモリです(メモリに情報を書き込んだり、読み出したりすることをアクセスすると言います)。これに対して端から順番にでないと書き込んだり、読み出したりできないタイプのメモリもあります。これをSequencial Access Memory(SAM)と言います。RAMに比べるとあまり使われていません。

 言葉が似ているので、RAMとROMに分けてメモリを分類しているのをよく見かけますが、これは正しくないと思います。つまりROMは書き込みができるかどうかを示しており、RAMはどの順番でもアクセスすることができるかどうかを示しているので、この二つの語は反対語ではないのです。

 さて、半導体メモリについてはDRAMという語をよく聞かれると思います。上の分類でいうと、揮発性でもちろん書き換え可能のRAMです。コンピュータのメインメモリにこれまで多く使われてきた半導体メモリの代表格です。次節から素子としてのメモリの話に入っていきます。