光デバイス

特許から読み取る青色発光ダイオード開発


<目次>

1.はじめに
2.課題
3.GaNの結晶成長
4.p型GaNの作り方
5.混晶の役割
6.白色発光ダイオード


1.はじめに

 青色発光ダイオードを製品として最初に世に出したのは日亜化学工業株式会社で、開発の立役者は中村修二氏であるのはよく知られている通りです。中村氏は窒化ガリウム(GaN)、もう少し広く言えば、V族窒化物半導体がもっとも可能性が高いと見抜き、良質の結晶を得る研究を行いました。

 1980年代から高いニーズを受けて青色発光ダイオードの研究開発は盛んに行われていました。そのなかでGaNが候補材料の一つとして知られ、研究も行われていましたが、1980年代後半から1990年代初頭にかけての研究の中心はセレン化亜鉛(ZnSe)を中心とするU−Y族でした。

 GaNに比べてZnSeの注目度が高かったのは今から見ればそれほど明確な根拠があったわけではなかったと思います。確かにGaNはバルク結晶が存在せず、また格子定数の近い半導体基板も容易に入手できるものがなく、半導体でないサファイアなどを基板として使わざるを得ないといった点が筋の悪さを感じさせたものと思われます。なお、GaNのバルク結晶は現在でも得られていません。最近はGaN基板の発光ダイオードというものがありますが、これはサファイア基板上に厚いエピタキシャル層を形成したものを使っているだけです。

 これに対してZnSeは一応バルク結晶が成長できることが知られていましたし、GaAsが比較的格子定数が近く基板として使えました。この辺りから実現可能性が高いと予測されたのではないかと思われます。

 GaN、ZnSeに共通する最大の問題点はp型ができないということでした。この問題を考えてみると、V−V族のGaAsやInPでは自由にp型、n型ができています。一方、U−Y族ではCdSなどでもn型しかできず、p型、n型が自由にできる化合物がないのが実情でした。この観点からみると、GaNの方がZnSeより可能性があるようにも思え、GaNに注目する方が正しかったのかも知れません。