光デバイス

14.超格子APD

 1μmより長い波長帯用で過剰雑音の少ないAPDを実現するために考案されたのが超格子APDです。まず構造の具体例を図14−1に示します。この図は特開昭58-61679号(特公昭63-28506号)から採りました。n型InP基板11上にn型InP層12、超格子層(明細書では量子井戸層となっています)13、p型In0.53Ga0.47As層14、p型InP層15が順に積層されています。この両面に電極17、18を付けてpin構造のフォトダイオードとしています。

 図のBの部分を拡大して示したのが円Aで、この層は薄いn型InP層20(膜厚40nm)とn型In0.53Ga0.47As層21(膜厚60nm)が各50層積層された超格子構造となっています。この超格子層に逆バイアスをかけた状態のエネルギーバンド図が図14−2に示されています。

 InPに比べるとIn0,53Ga0,47AsはバンドギャップエネルギーEが小さいので図のようなバンド構造になります。ここで注目するのはこの2つの材料の伝導帯同士の差ΔEと価電子帯同士の差ΔEです。図のように両者は等しくなくΔEの方が大きくなっています。これがなぜかというのは説明が難しく、材料の性質というしかありません。

 このような状態のとき、電子のイオン化の方が起きやすくなります。InPの伝導帯にあった電子がInGaAsの伝導帯に落ちるとΔE分だけエネルギーが高い状態になります。このエネルギーが失われるまでは電子は通常より高速で移動し原子に衝突するので、イオン化はより起きやすくなります。

 正孔の方はΔEが小さいので、InGaAs層内に入ってもエネルギーはそれほど高くなく、この違いによって超格子層内でのイオン化の割合は電子の方が高くなります。この違いによってInGaAs単層で受光する場合より超格子を用いた場合の方が過剰雑音が減ることになります。これが超格子APDの原理です。

 超格子の材料の組み合わせや構造はその後いろいろな工夫がなされています。例えば特開平2-58276号にはAl0.45Ga0.55As/GaAsやIn0.47Ga0.53As/Al0.7In0.3Asの組み合わせなどで、ΔEとΔEに差を出せることが示されています。とくに後者の組み合わせはその後よく使われるようになっています。