光デバイス

18−5.発光受光兼用素子

 これまで説明してきたように光の検知は基本的にはpn接合があれば可能です。一方発光素子も基本的にはpn接合を使っています。それならば発光素子、例えば発光ダイオード(LED)に外から光を当てると光電流が流れるでしょうか。流れます。受光素子として実用に耐えるかはわかりませんが、とにかく電流は流れるはずです。

 逆に受光素子、例えばpnフォトダイオードに順方向電流を流したら発光するでしょうか。これは光らない場合が多いはずです。光るものがあるかもしれませんが、それはまれでしょう。光らない理由は以下で説明したい素子とあまり関係がないので、ここでは説明しません。

 LEDに光を当てると光電流が流れるということは発光素子は受光素子にも使える可能性があるということです。発光素子と受光素子は光通信や前節のフォトカプラなどでは必ずペアで使われますから、これを兼用できると便利です。

 しかしLEDは効率的に発光するような構造に作られていて、受光素子として使うことは想定されていません。このためLEDをそのまま受光素子として使っても、もともと光検知を目的として作られたフォトダイオードに比べると性能は実用に耐えないのが普通です。そこでなんとか兼用できるようにいろいろな工夫がなされています。ここではそのうちの2つの例を紹介します。

 まずはじめは特開昭54-22184号より、図18−15、16を参照下さい。これはもっとも単純なpn接合を使った発光受光兼用素子です。図のように光ファイバ7との結合を行う光通信用の素子です。図18−15は発光素子として動作している場合、図18−16は受光素子として動作している場合を示しています。

 図18−15を参照すると、n型GaAs基板1の表面(図では下側の面)にp型GaAs層2が作られています。このp型層の一部だけにさらに不純物を拡散してpの部分4を作ります。p型層の表面に絶縁膜3を着け、pとした部分に孔5を開けて電極6からキャリアがこの部分にだけ入るようにしてやると、この狭いp部分とn型層の接合で発光が起きます。基板1に溝8を設けて光ファイバ7を接合部分の近づけてやれば、光はほぼすべて光ファイバに入ることになります。電流を狭い部分に集中させ、発光した光をほぼすべて光ファイバに入れるようにしたことで、効率の良いLEDができます。

 一方、図18−16のように光ファイバを伝わってやってきた光を検知する場合、光ファイバから出る光は光ファイバのコアいっぱいに広がっていますから、素子のp部分4より広い部分に当たります。しかしこのp部分の外側もp型層2で、pn接合はできていますからこの部分にできた電子−正孔対も光電流になります。受光の場合はこのように素子全体で発生する電子−正孔対を電流として観測することができます。

 なお、p層とp層では少しだけバンドギャップエネルギーが変化します。このため発光ダイオードから出た光の波長範囲を広くカバーできる利点があり、受光素子としての感度と発光素子の効率とを両立することができます。

 もう一つの例は特開昭58-134483号より紹介します。この例では発光と受光の場合で素子への接続を変えます。発光素子として動作させる場合は図18−17のようにpn接合を使ったLEDとして動作するように接続します。n型AlGaAs層4とp型AlGaAs層3との間のpn接合に順バイアスするように電源E1を外部接続をします。これにより右側に示したエネルギーバンド図のように、pn接合が順バイアスされ、キャリアが注入されて発光が起こります。

 一方、受光素子として使う場合はフォトトランジスタとします。n型GaAs層2を加えてnpn型のトランジスタができています。n型層4がエミッタ、p型層3がベース、n型層2がコレクタになるようにエミッタ層4とコレクタ層2が積層された基板1の間に電源E2を図18−18に示すように接続します。これにより右側の図に示すようにフォトトランジスタとして動作します。LEDとして動作するpn接合にもう一層n型層を加えてトランジスタとし、光電流が増幅されるようにしたため、受光素子としての性能も改善されます。

 この他にも発光素子と受光素子を兼用するための工夫がなされていますが、それぞれの性能をできるだけ高くしなければならない使い道の場合は、それぞれ専用の素子を別々に用意した方がよいでしょう。これに対して、発光と受光の両方の性能ともそれほど高くなくても、コストを安く抑えたい場合や取り付けスペースを極力小さくしたい場合などには発光受光兼用素子が大変有用になるはずです。