光デバイス

9.受光感度(量子効率)

 前節で取り上げた暗電流は光が照射されていないにも拘わらず流れてしまう電流ですから、光を検出しようとするときにこれが多いと、本当に光が来ているのかどうかわかりにくくなってしまうということが問題でした。

 一方、光が照射されたときにはできるだけ大きな光電流が流れるようにすることも重要です。どれだけ光がよく電流に変わるかを表すのが受光感度で、
  受光感度=光電流の大きさ/入射光のエネルギー
で定義されます。単位はA/Wです。

 もう少し原理的に入射した光子の数に対して何個のキャリアが光電流になったか示すこともあります。これを量子効率と呼び、単位は%で表します。

 太陽電池で使われるエネルギー変換効率も考え方としては似ています。こちらは入射光エネルギーに対する取り出される電気エネルギーの割合です(単位:%)。

 pinフォトダイオードの受光感度を向上させるための考え方も太陽電池の変換効率を上げるための考え方と似ています。まず光が素子内にできるだけ入ってくれなければいけません。このためには素子表面での反射を減らすことが必要です。

 つぎに光ができるだけ素子内で吸収される必要があります。これには検出したい光の波長をよく吸収する材料を選択することがもちろん必要です。ただしこの吸収の程度(吸収係数)は小さすぎても大きすぎてもいけません。前にも触れましたが光電流になる電子−正孔対は空乏層内で発生する必要があります。吸収係数が小さいと光は空乏層で吸収されずに透過してしまいます。逆に吸収係数が大きいと光はほとんど素子の表面付近で吸収され、発生した電子−正孔対が空乏層に到達しないと、これも光電流になりません。

 そして最後はせっかく発生した電子−正孔対が光電流にならないで消滅してしまうことがないようにする必要があります。一旦発生した電子と正孔が再結合してしまう場所は素子の表面がもっとも多いと考えられています。このこともあるので、素子表面で光が吸収されるのは避けなければなりません。そのほか半導体層内に欠陥や不純物が多いと空乏層内などでも再結合が起こるため、半導体層はできるだけ質のいい結晶にする必要があります。

 さて上記のような受光感度を悪くする原因を除くため、素子構造の工夫がいろいろされています。まず、入射した光を空乏層に届かせるためには、入射面にある層を薄くする必要があります。7節で紹介した素子構造でも光が入ってくる側のp+層は薄いのがわかると思います。これはこのような理由によります。別の特許に載っている図を紹介しておきます。

 図9−1は特開平7-240534号に載っているSiのpinフォトダイオードの量子効率についての図面です。「従来のPINダイオード」と書かれている曲線42は上のp+層の厚みが0.5μmで、「本発明のPINダイオード」と書かれている曲線41の方は0.1μmに薄くした場合です。グラフの横軸は波長ですが、波長が700nm以上ではどちらもあまり差がありませんが、これより短い波長になると厚みを薄くした場合、量子効率が大きく改善されているのがわかります。

 Siの場合、波長が可視光になると吸収係数は非常に大きくなり、表面すぐのところでほとんど吸収されてしまいます。p+層の厚みが0.5μmもあると光は空乏層に達しないのです。

 化合物半導体の場合は、窓層という構造にするのが普通です。例えば図9−2(特開昭58-57761号より)のように、光吸収層3をInGaAsP層とし、その上のn層4を吸収層よりバンドギャップの大きいInP層とします。6の部分は不純物を拡散してp型としてpin接合を形成します。

 InP層4は光吸収層3よりバンドギャップが大きいので、波長1〜1.55μmくらいの入射光を吸収せず、光は吸収層に十分達することができます。この意味でInP層4を窓層と呼びます。この窓層では吸収がほとんど起こらないので、電子−正孔対が発生しないわけですから、表面で再結合することもないことになります。

 構造を工夫して光吸収層に直接光が入射するようにしたものもあります。図9−3は特開2000-252513号から引用したものですが、光吸収層であるn−層12の側面を斜面にして露出するようにし、ここから光が入射できるようにしています。この場合も表面再結合が防止できるとされています。